共通テスト「英語・リスニング」次年度はどうなる?令和8年度の評価を読み解き、対策を解説

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2026年1月に実施された令和8年度の大学入学共通テスト「英語(リスニング)」は、平均点が前年度から約7点の大幅低下となり、受験生にとって厳しい試験となりました。
形式そのものに大きな変化はなかったにもかかわらず、なぜ平均点はここまで下がったのでしょうか。
高校教員や教育研究団体の評価を読み解くと、「情報処理の負荷」と「言い換えの難度上昇」という2つの課題が浮かび上がってきます。

この記事では、令和8年度リスニングの特徴を整理しつつ、次年度以降の出題の方向性と求められる対策を解説します。

※本記事の内容は、大学入試センターが公表した「令和8年度共通テスト本試験『英語(リスニング)』に関する高等学校教科担当教員の意見・評価」および「全国英語教育研究団体連合会による評価」をもとにまとめています。

一般社団法人 日本速読解力協会 理事 安田 哲

ライター

安田 哲

一般社団法人 日本速読解力協会 理事

約20年間にわたり首都圏大手進学塾の現場の最前線で、英語・国語を中心に指導。中学受験・高校受験の難関校への多数の合格者を輩出。科目の内容の指導だけでなく、家庭学習管理、生徒・保護者の皆様との面談を多数行う。大学院では言語学を専攻、英語以外の言語に関しても幅広い知識を有する。

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【英語(リスニング)】令和8年度はどんな試験だったか

令和8年度の試験を振り返ると、大きく3つのポイントがありました。

令和8年度試験の3つのポイント

ポイント1:平均点は前年から大幅に低下(難化)し、受験生にとって厳しい試験だった

ポイント2:問題構成に変化はないが、図表や資料と照らし合わせる「情報処理の負担」が大きかった

ポイント3:話者の話し方や発話スピードの変化、選択肢の「言い換え」への対応が必要な問題は正答率が低かった

各ポイントについて、詳しく解説していきます。

平均点は大幅低下

令和8年度の本試験の平均点は54.65点でした。
前年度(令和7年度)の61.31点から6.66点の大幅低下となりました。リーディングが前年度比+5.12点と易化したのとは対照的な結果です。

全国英語教育研究団体連合会は「語数や設問数に大きな変化が見られない中での平均点低下は、情報処理の負荷や言い換えの難易度の上昇が影響していると考えられる」と分析しています。
形式が変わらなくても、問題の「質的な難しさ」によって平均点は大きく動くことを示した年となりました。

大問構成・形式は変わらないが「情報処理の負荷」が増した

大問数6問・設問数37問・配点100点という構成に変化はありませんでした。読み上げ回数も第1〜2問が2回、第3〜6問が1回と前年度と同様です。

大問 小問 内容 設問数 配点 放送
回数
1 A 短い発話の内容に合う英文を選ぶ 4 16 2
B 短い発話の内容に合う絵を選ぶ 4 12 2
2 短い対話の内容に合う絵を選ぶ 3 12 2
3 短い対話の内容について、質問に対する答えを選ぶ 6 18 1
4 A やや長めの発話の内容に沿って、情報を整理する 8 8 1
B 複数の発話を比較して、条件に最もふさわしい内容を選ぶ 1 4 1
5 社会的話題に関する講義を聞き、質問に対する答えを選ぶ 7 16 1
6 A 2人の会話を聞いて、質問に対する答えを選ぶ 2 6 1
B 長めの会話・議論(3人)を聞いて、質問に対する答えを選ぶ 2 8 1
合計 37 100

しかし、高校教員評価が指摘するように、「図表やイラストを活用した問題や複数情報の整理を要する問題が多く、情報を処理・判断する力がより求められる試験」となっています。
音声を聞きながら同時に図表やワークシートを参照・記入するという複合的な作業が、受験生の負担を高めた要因の一つと考えられます。

正答率が著しく低い問題

大問 小問 内容 正答率
1 A 短い発話の内容に合う英文を選ぶ(問1~4) 約53%
B 短い発話の内容に合う絵を選ぶ(問5~8) 約79%
2 短い対話の内容に合う絵を選ぶ(問9~11) 約66%
3 短い対話の内容について、質問に対する答えを選ぶ(問12~17) 約55%
4 A やや長めの発話の内容に沿って、情報を整理する(問18~25) 約64%
B 複数の発話を比較して、条件に最もふさわしい内容を選ぶ(問26) 約75%
5 社会的話題に関する講義を聞き、質問に対する答えを選ぶ(問27~33) 約34%
6 A 2人の会話を聞いて、質問に対する答えを選ぶ(問34~35) 約44%
B 長めの会話・議論(3人)を聞いて、質問に対する答えを選ぶ(問36~37) 約52%

第4問Aの並べ替え問題(問18〜21)の正答率は約22%。
バスの乗降手順をイラストで並べ替える問題でしたが、全国英語教育研究団体連合会は「バスの乗降を示すイラストの違いが受験者に伝わりづらかったのではないか」「受験者が何を聞き取るべきかの焦点がずれたことも考えられる」と指摘しています。

さらに、第5問のワークシート補完問題(問28・29)で、正答率は約13%。
聞き取った音声を別の表現に言い換えた選択肢を選ぶという作業が求められましたが、1回の聞き取りで対応するには難度が高すぎたとの評価です。

こうした突出した低正答率が全体の平均点を押し下げる一因となったと考えられます。

両評価が指摘した課題

リスニング「以外」の要素が得点に影響

両評価が共通して指摘したのが、図表やワークシートを用いた問題において「リスニング以外の要素が得点に影響する可能性がある」という点です。

全国英語教育研究団体連合会は「思考力・判断力を問うことは重要であるが、図表やワークシートを用いた問題では情報処理の負荷が増大し、リスニング以外の要素が得点に影響する可能性がある」と述べています。
音声を正確に聞き取れていても、図表の読み取りや情報の整理・記入という別の作業が加わることで、純粋な「聞く力」の評価からずれてしまうリスクがあるということです。

高校教員評価も第5問について「各2つの独立した問題を完答とすることの必然性や配点が低いことも検討課題の一つ」と指摘しており、問題設計の精度向上を求めています。

言い換え(パラフレーズ)の難度上昇

先に挙げた第5問(問28・29)の正答率が約13%と極めて低かった背景には、言い換え(パラフレーズ)の難度の高さがあります。
問28では音声中の common を widespread に、問29では great financial rewards を profitable に言い換えた選択肢を選ぶことが求められました。

全国英語教育研究団体連合会は「言い換えを一度の聞き取りで処理する負担が大きかった」と評価しており、「言い換えについても、一度の聞き取りで対応可能な範囲に収まるよう配慮することが望まれる」と要望しています。
1回限りしか流れないリスニング問題において、受験生に情報処理の複雑さをどこまで求めるかは、今後の大きな課題と言えるでしょう。

場面設定・イラストの不自然さへの指摘

全国英語教育研究団体連合会は第2問(問9)について「場面設定とイラストのいずれも改善が求められる」と指摘し、高校教員評価も第1問Aで「コミュニケーションの場面に即した言い換え表現が工夫されていたが、表現になじみのない受験者もいたと考えられる」と述べています。

問題の場面が不自然だったり、イラストが伝えたい情報を十分に表現できていなかったりすると、英語力とは関係のないところで受験生がつまずいてしまいます。
この点はリーディングの評価と共通する課題であり、出題側でも継続的な改善が求められている点です。

次年度以降の出題はどう変わるか

基本的な問題構成は当面維持される見通し

両評価の総括を読む限り、大問数6問・設問数37問・読み上げ回数(第1〜2問が2回、第3〜6問が1回)という基本構成は当面変わらないと見てよいでしょう。
全国英語教育研究団体連合会も「昨年度と問題構成や作問の方向性に大きな変更はない」という認識を示しており、現在の枠組みの中での質的改善が続くと予想されます。受験生としては、現在の形式に慣れておくことが引き続き重要です。

難易度調整の方向性 —— 情報処理量による難易度アップは限界

令和8年度の評価で両者が共通して求めたのが、「難易度調整の方向性の見直し」です。
全国英語教育研究団体連合会は明確に「難易度調整に当たっては、情報量の増加ではなく、語彙や話題の抽象度、発話速度などを工夫することで、『聞く力』を適切に測ることが望ましい」と述べています。

図表や資料を増やすことで難易度を上げるのではなく、音声そのものの語彙レベルや発話の速さ・抽象度によって難易度を調整するという方向性が、次年度以降の改善点として意識されると考えられます。
受験生から見れば、「図表の複雑さ」よりも「英語そのものをいかに正確に聞き取れるか」がより純粋に問われるようになる可能性があります。

第5問のような「講義+活動」は今後も中心的な位置を占める

第5問の「大学の講義を聞いて、複数の活動(ワークシート補完・要約判断・ディスカッション)に取り組む」という形式は、新学習指導要領が掲げる「技能統合・学習過程の意識」を体現した問題として、両評価から高く評価されています。

全国英語教育研究団体連合会は問33について「実際の授業前後の活動とも類似性が高く、思考力・判断力を問う問題としても適切」「このような出題により高等学校での授業変革が促される」と評価しており、第5問のスタイルの出題は今後も維持・発展していく可能性が高いと言えます。
ただし、個々の設問の難度設定や言い換えの水準については、引き続き調整が求められると考えられます。

【英語(リスニング)】受験生に求められる対策

それでは、共通テストの英語(リスニング)はどのような対策をすればいいのでしょうか。ポイントは大きく3つです。

英語(リスニング)の対策ポイント3つ

ポイント1:聞き取るだけでなく、図表など複数の情報を整理しながら聞く練習を重ねる

ポイント2:単語の暗記ではなく、多くの表現に触れ、同じ内容を複数の表現で使えるようにする

ポイント3:アメリカ英語だけでなくイギリス英語など多様な話者の英語に触れる

ここからは、それぞれの対策について具体的に解説します。

聞き取った「その先」の力

令和8年度の試験が示したように、リスニングの問題では「音声を聞く」だけでなく、「同時に図表を見る」「ワークシートに情報を整理する」という複合的な作業が求められます。
つまり、「音声を聞き取れた」という段階は、リスニングの「入口」に立っているだけにすぎないということです。

普段の学習でも、音声を聞きながらメモを取る・図表に情報を書き込む・複数の情報を並べて比較する…といった練習を意識的に取り入れることが重要です。日々のリスニング演習の中で、「整理しながら聞く」習慣を身につけておくことが、本番での対応力につながります。

パラフレーズへの対応力は重要

正答率の低い問題が示したように、音声の内容を別の表現に言い換えた選択肢を選ぶ力は共通テストリスニングにおける重要な力の一つです。

対策としては、同じ内容を複数の表現を使えるようにするための練習をすることです。
これはリーディングでも身につけることができ、さまざまなジャンルの文章を読むことはもちろんですが、語彙学習の段階でも単語帳のように「一対一の訳語」で覚えるのではなく、例文を使って多くの表現に触れておくことが重要です。

多様な英語・話者への慣れ

共通テストリスニングではアメリカ英語・イギリス英語に加え、英語を母語としない話者の発話も含まれています。グローバル社会を見据えたリスニング試験として、今後もこの傾向は続くと考えられます。
特定のアクセントの英語だけに慣れていると、本番で聞き取りづらく感じる場面が出てくる可能性があります。日頃から多様な話者の英語(イギリス英語・オーストラリア英語・非母語話者の英語など)に触れる機会を意識的に作っておくことができると、本番への備えになるでしょう。

おわりに

共通テストリスニングの「聞く力」を問うという基本は変わらないものの、「技能統合」「学習過程の反映」「思考力・判断力の測定」といった新たな要素を1回限りの音声聞き取り試験の中でどう実現するか、出題者も模索を続けています。
令和8年度の平均点低下は、その模索の中で生じた難化とも言えます。両評価が求めたように、次年度以降は情報処理の負荷を適切に抑えながら、純粋な「聞く力」をより正確に測る方向への修正が期待されます。

受験生としては、こうした変化の中にあるリスニング試験に対応するために、英語の音声そのものに慣れることを土台としながら、「整理する力」「言い換えを理解する力」「多様な英語に対応する力」を地道に積み上げることが、最も確かな対策と言えるでしょう。

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まとめ

英語(リスニング)は次年度問題構成に大きな変更はない可能性が高い!
「いかに正確に聞き取れるか」が純粋に問われるようになる?

  • 令和8年度の問題は情報処理の負荷が大きい問題が多く、平均点は大幅低下
  • 音声を聞き取った先に情報処理等の作業が求められる
  • 多様な話者の英語に触れる機会を意識的に作ることが本番への備えに

令和8年度の共通テスト英語(リスニング)はリーディングと対照的に平均点が大幅に低下しました。「音声を聞き取ることが出来る」だけでなく、その先に「情報を整理する力」「言い換えを理解する力」「多様な英語に対応する力」等を積み上げることで、合格へと近づくことが出来るでしょう。

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