直木賞とは?受賞の基準と過去の受賞作品もご紹介
公開日:2023.11.07
最終更新日:2023.11.06
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直木賞選考会が2023年7月19日に開催され、第169回の受賞作品は垣根涼介さんの「極楽征夷大将軍」、永井紗耶子さんの「木挽町のあだ討ち」と発表されました。
直木賞は年に2回発表されますが、一体どのような基準で選ばれるのでしょうか。
中高生におすすめの過去の受賞作品も合わせてご紹介します。
目次
直木賞とはどんな賞なの?
直木三十五を記念して創設された文学賞
直木賞(正式名称は直木三十五賞)は、1935年に直木三十五の業績を記念して芥川賞と共に創設された文学賞のことで、創設者も芥川賞と同じ菊池寛氏です。
直木賞受賞作品発表の際には、芥川賞(正式名称は芥川龍之介賞)も同時に発表されます。
中堅やベテラン作家による短編~長編の大衆小説のなかから選ばれます。
大衆小説とは、「読み手が楽しいと感じるエンターテイメント性(娯楽性)に溢れた小説」のことを指します。
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直木三十五ってどんな人?
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直木三十五(本名:植村宗一)は明治24年に大阪市で生まれました。
薬局勤務や小学校の教員を務めたのち、明治44年に早稲田大学に入学しましたが、学費が払えず除籍されてしまいます。
そのあともいくつかの事業を失敗しながらも、大正12年の関東大震災後、プラトン社に入社して大衆小説を書き始めました。
昭和4年週刊朝日に連載した「由比根元大殺記」や、昭和5年から昭和6年に東京日日新聞・大阪毎日新聞に連載した「南国太平記」などで、流行作家として地位を確立しました。
そして昭和9年に43歳でこの世を去りました。
直木三十五は本名ではなくペンネームで、「なおきさんじゅうご」と読みます。
「直木」は本名「植村」の「植」の字を分解して作ったもの、「三十五」は彼が三十一歳になった時「直木三十一」とし、自分の年齢に合わせ「三十二」「三十三」と変えていったと言われています。
直木三十五の作品の特徴
直木三十五の作品は、時代小説から現代小説まで幅広く、文芸評論や随筆も執筆しています。
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そんな彼の代表作と挙げられるものは、時代劇ドラマ「水戸黄門」の原作と言われている「黄門廻国記」、映画化もされた「南国太平記」です。
どちらの作品もエンターテインメント性に溢れており、大衆から愛される作風で、当時の世の中を大きく賑わせました。
直木賞を受賞するには
次に、直木賞を受賞するための基準や受賞した際にはどのような賞品がもらえるのかご紹介します。
直木賞の受賞基準
まず、直木賞候補として選考作品に入るために満たさなければいけない条件があります。
- 大衆小説である
直木賞は大衆小説に贈られる賞なので、大衆小説の定義に基づいた「読み手が楽しいと感じるエンターテイメント性(娯楽性)に溢れた小説」であるかどうかがポイントです。 - 中堅作家が書いた作品である
何年目までが中堅かという基準は明確ではありませんが、作家としてある程度のキャリアを持つ人が中堅作家と呼ばれています。 - 単行本として発刊された作品である
作品が直木賞候補に挙がるためには、過去に単行本として発刊されたということが条件です。それ故に、ある程度のキャリアを持つ中堅作家というのが受賞基準なのかもしれませんね。 - 中編~長編の作品である
作品の長さは中編~長編が選考基準として挙げられています。文字数は、中編は40,000文字程度、長編はそれ以上の文字数です。
直木賞の受賞賞品
見事直木賞を受賞したら、芥川賞と同じく、受賞作家には正賞に懐中時計、副賞に賞金100万円が贈られます。
なぜ懐中時計が正賞なのか、疑問に持つ方も多いですよね。
直木賞や芥川賞が創設された時代は、生活に苦しむ作家が多くいました。そんな作家のために、賞の創設者である菊池寛氏は、正賞を懐中時計にしようと決めます。
当時、とても高価なものとされていた懐中時計は、もし受賞した作家が生活に困ったときにお金に換えられるようにという配慮もあったそうです。
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また、直木賞受賞作品は「オール読物」という有名な雑誌に作品の一部が掲載されます。
受賞の発表があった瞬間から、メディアに取り上げられたり、書店で特設コーナーが設けられたりと、受賞作品や作家は世間の注目の的になります。
中高生でも読める!過去の受賞作品
文学賞を受賞した作品は読むのが難しいかも…というイメージがあるかもしれません。
でも中高生の皆さんが楽しく読める作品もたくさんあります。
面白そうだなと感じた作品はぜひ手に取ってみてくださいね。
下町ロケット(池井戸潤/第145回直木賞受賞作)
「お前には夢があるのか? オレにはある」
研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。
圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。
特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた――。
ドラマシリーズ化されている大ヒット作品です。
専門用語や特許についての話は少し難しく感じるかもしれませんが、登場人物たちの熱い思いや絆、夢を持ち信じ続ける姿勢に感動することでしょう。
サラバ!(西加奈子/第152回直木賞受賞作)
僕はこの世界に左足から登場した――。
圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった――。
参考:サラバ!|書籍|小学館
単行本では上中下巻に分かれていて、かなりの長編作なのですが、興味をそそられたり共感できたりするようなエピソードがたくさん出てくるので、読者を飽きさせない工夫が施されています。
主人公の視点でストーリーが展開していくため、情景を想像しながら読み進めていくことができます。
蜜蜂と遠雷(恩田陸/第156回直木賞受賞作)
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵16歳。
かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。
音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。
完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。 第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか――。
作品の中にはたくさんのクラシック音楽が登場しますが、読みながらピアノの音色が自然とイメージできるような巧みな文字表現、そして登場人物の感情や情景も丁寧に描かれています。
文字数も大変多いので躊躇する方もいるかもしれませんが、ページをめくる手が止まらなくなるほどのめり込んでしまうでしょう。
2017年には本屋大賞も受賞しています。
まとめ
直木賞受賞作品を読んで多彩なジャンルの作品に触れてみよう
- 直木賞は直木三十五を記念して創設された文学賞
- 選考基準は「大衆小説・中堅・単行本発刊済・中編/長編小説」であること
- さまざまなジャンルの受賞作品があるので、興味を持てる内容が多い
受賞作品の発表が近づくにつれ、書店などではノミネート作品を取り上げることが多くなります。映画化されている作品も多いので、原作を選んでみるのも良いでしょう。
また、長編小説に挑戦する機会にもなりますので、移動中や長期休暇中などを利用して読んでみてくださいね。
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