今、教育の場に必要とされている「ウェルビーイング」って何?

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2023年3月に行われた文部科学省の中央教育審議会で教育政策の基盤が打ち出されました。
その中で子どもたちとウェルビーイングについて言及されています。

今後の入試にも出題される可能性が高い「ウェルビーイング」とは一体何を指すのでしょうか?

ウェルビーイングと教育の関係

ウェルビーイングとは

ウェルビーイングとは英語で「Well-Being」と表記し、「心身ともに健康で、幸せが持続している状態」という意味です。
どのような人でも生きていく上でウェルビーイングが大切になっていきますが、教育の場においてもウェルビーイングは重視されています。

学びの場でも必要なウェルビーイング

経済協力開発機構(OECD)が2015年に実施した学習到達度調査(PISA調査)において、「生徒のwell-being」という報告書を出しました。
その中で、子どもにとってのウェルビーイングの定義を「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的、認知的、社会的、身体的な働き(functioning)と潜在能力(capabilities)」としています。

また「OECD ラーニング・コンパス(学びの羅針盤) 2030」では、「教育の幅広い目標を支えるとともに、私たちの望む未来(Future We Want)、つまり個人のウェルビーイングと集団のウェルビーイングに向けた方向性」という指針も提示しています。

参考:OECD ラーニング・コンパス(学びの羅針盤) 2030

日本の教育においても、OECDが提示したラーニング・コンパスに基づいて、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」として、以下のように取りまとめています。

経済協力開発機構(OECD)では子供たちが2030年以降も活躍するために必要な資質・能力について検討を行い,令和元(2019)年5月に“Learning Compass 2030”を発表しているが,この中で子供たちがウェルビーイング(Well-being)2を実現していくために自ら主体的に目標を設定し,振り返りながら,責任ある行動がとれる力を身に付けることの重要性が指摘されている。

さらに「OECD ラーニング・コンパス(学びの羅針盤) 2030」では、「教育の目的は個人と社会のウェルビーイングを実現するため」とも言及されており、日本の教育政策の基盤にもなっています。

ウェルビーイングとSDGsの関連性

SDGsとは

2015年に国際連合が定義したSDGs(Sustainable Development Goals・持続可能な開発目標)も、ウェルビーイングと関連性を持っています。

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標のことです。

SDGsでは「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」を掲げられ、貧困や飢餓、環境から人権まで、現代の世界が抱えている課題が挙げられています。
その「17の目標」を達成する重要なポイントとして、ウェルビーイングが深く関係しています。

SDGsの目標達成に必要不可欠なウェルビーイング

SDGsの「17の目標」の中にウェルビーイングと関係している目標が2つあります。

目標3
すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)―あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

目標の中のWell-Beingという文言は「福祉」と訳されています。
目標のターゲットは主に母子の健康や伝染病対策で、健康をメインにした目標にはなっていますが、メンタルヘルスの対策や金銭面を心配せずに受けられるサービスの発展も含まれています。
全ての人が状況に関係なく身体やメンタルの健康を維持する環境を目指すというところから、目標3はウェルビーイングと深く関係していると言えます。

目標8
すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する

「働きがいも経済成長も」と掲げられた目標8では、安定した経済成長の中で、人々が働きがいのある人間らしい仕事ができる環境の実現を目標として掲げています。 働きがいのある人間らしい仕事ができるために、健康状態を維持したり、労働環境を整えたりすることが必要ということから、ウェルビーイングが深く関係していることがわかります。

SDGsは、経済・社会・環境すべてが整っている社会を目指すための目標です。
そして今の社会に必要とされているウェルビーイングについても、「個人と社会すべての状態が健康かつ幸せ」という状態を指しています。

つまりSDGsの達成には、世界全体がウェルビーイングになっている状態が必要なため、SDGsの達成とウェルビーイングは深く関係していることがわかります。

現代の子どもたちに必要とされている理由

こども施策を推進していくための「こども基本法」が、2022年6月に国会で成立し、2023年4月に施行されました。

こども基本法とは…
「日本国憲法および児童の権利に関する条約の精神にのっとり、全てのこどもが、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、こども施策を総合的に推進することを目的とする」法律のことです。

こども基本法では、こども施策の基本理念を定めていますが、こども施策のひとつ「全てのこどもの健やかな成長、Well-beingの向上」という項目でウェルビーイングが言及されています。
児童虐待の増加、いじめや不登校の深刻化といった、現代の社会では子どもが生きづらい状況を生み出す問題が多発しています。

そのような状況下で、子どものウェルビーイングが向上するとは言い難いですよね。

速ドッグロボ

子どもの権利を守る法律「こども基本法」は、年々低下傾向にある子どもの幸福度や自己肯定感の向上と共に、ウェルビーイングが持続していくことを目指しています。

参考:こども家庭庁ホームページ

ウェルビーイング向上のためにできること

子どもたちのウェルビーイングの向上を目指すためには、子どもたちが一日のうちでも長く過ごす家庭や学校生活の環境を整えることが重要です。
子どもたちが安心して過ごせる場所づくりをすることが、子どもたちのウェルビーイングにつながります。

現代では自由に過ごせる時間が少なく、窮屈に感じている子どもたちも少なくありません。
子どもたちがのびのびと過ごせる環境を整え、周りの大人たちが見守ることで、いろいろなことに挑戦したり、考えたりして、達成感を得ることができます。

また、その環境づくりをする大人たちがまずウェルビーイングを高めることで、子どもたちのウェルビーイングも高めることができます。
子どもを見守り、育てる大人が自身のウェルビーイングを見直してみることで、子どものウェルビーイング向上に何ができるかという答えが見えてくるかもしれません。

まとめ

子どものウェルビーイング向上には環境づくりが大切

  • 学びの場でもウェルビーイングは重要視されている
  • 問題が深刻化している現代だからこそ子どものウェルビーイング向上は必須
  • 大人のウェルビーイング向上が子どものウェルビーイング向上につながる

発展が目まぐるしく、情報が多く行き交う昨今では、特に子どもたちの心身状態が懸念されることが多いです。そのような状況を変えるためにも、ウェルビーイングの向上を目指すことが大切です。
SDGsとの関連性も深いウェルビーイングは、今後入試にも出題される可能性が高いキーワードのひとつですので、これからは少し「ウェルビーイング」を意識しながら過ごしてみてはいかがでしょうか。

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