語彙力と読解力が決める!「察する」から「理解する」への道

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「ここのラーメン、初めて食べたけどヤバい
「今日の授業で出された課題はマジでエグい
最近の言葉遣いでこんな表現を聞いたことがあるでしょうか。また、この2文の意味は正しく理解できますか。

もちろん、実際の場面では発しているときの顔の表情や声色、前後関係などから意味を理解することは容易です。
しかし、文字情報だけを見て理解できるかと言われると、首をかしげてしまうのではないでしょうか。

一般社団法人 日本速読解力協会 理事 安田 哲

ライター

安田 哲

一般社団法人 日本速読解力協会 理事

約20年間にわたり首都圏大手進学塾の現場の最前線で、英語・国語を中心に指導。中学受験・高校受験の難関校への多数の合格者を輩出。科目の内容の指導だけでなく、家庭学習管理、生徒・保護者の皆様との面談を多数行う。大学院では言語学を専攻、英語以外の言語に関しても幅広い知識を有する。

語彙・文法・論理力を鍛える

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語彙の低下は思考回路の低下

便利だけど…通じる?

冒頭で紹介した「ヤバい」は、以下のような例も観察できます。

「テスト勉強で徹夜したから眠くてヤバい」
「ヤバい状況からようやく脱することができた」
「ここから見る景色はヤバい」
「あの選手の記録はヤバい」

このように「ヤバい」という一言で通じてしまうのは、「便利」なのかもしれませんが、正しい意味が通じるかという観点で見ると、それこそ「ヤバい」状況と言わざるを得ません。

感情表現を使えるのに…

この「ヤバい」という形容詞は、それぞれ別の感情表現(心情語)の言い換えと考えられます。

例えば「ここのラーメン、初めて食べたけどヤバい」は、きっと「美味しい」の度合いが高いことを示していると考えられます。(もちろん、本当に「危険」な意味を持つラーメンかもしれませんが…)

他にも「ヤバい状況」は「危険な状況」ですし、「記録がヤバい」は「優れている」の意味で、「景色がヤバい」は「とても素晴らしい」の意味と考えることができます(もちろん、記録と景色の例文は正反対の意味の可能性もあります)。

このように、本来「感情表現」があったにも関わらず、「ヤバい」を「万能で便利な形容詞」として使って済ませてしまうのは、言葉に対する興味が減っていってしまうだけでなく、ものごとを単純化して捉えてしまうことにもつながるでしょう。

豊かな語彙を身につけさせたい

「多くのことばを身につけさせたい」というのは、言葉の知識量を増やしてほしいとか、興味を持ってほしいとか、そういうレベルの話ではないと考えています。

ヒトは「ことば」を介していろいろなことを考えます。さまざまな判断をする上で、頭の中にある「ことば」から最適解を出そうとしています。
その意味では、知っていることばの量が多ければ多いほど、複雑なものごとを正しく捉えられるようになると考えることができます。

雨が降っている時に「雨が降っている」だけではなく、「ざーざー」「ぱらぱら」「しとしと」などの表現が加わるだけで、降雨の状況を適切に表すことができますね。

行間・文脈に潜む真意

「この部屋暑いね」と言われたら…

ある部屋に何人かの人がいて、後から入ってきた人が「この部屋暑いね」と発言したとします。ここで「うん、そうだね」という返答だけで終わるでしょうか。
多くの場合、「窓を開けようか」とか「エアコンの温度設定を下げようか」という返答もセットになるでしょう。

もう一つ例を挙げましょう。
二人で会話をしていて「今週の土曜日、ピクニックに行こうか」という発言に対し、「ピクニックは魅力的で、すごく行きたいと思うんだけど…」という発言の後に続く内容はどうなるでしょう。
おそらく「予定があって行かれない」とか「あなたとは行きたくない」など「断る」というのが内容だろうと考えられます。

物語・小説文の読解では重要

ここまでの内容は、物語文や小説文の読解を進めるうえで極めて重要なポイントだなと感じられるでしょう。
いくつか例を挙げてみます。

例1

部長「君が書いた企画書は、君の個性がとても発揮されているね」
課長「そうですか! ありがとうございます」
部長「ちょっと個性的すぎるかもしれないが…」

この【例1】で部長は課長のことをどのように評価しているでしょう。
「他者には真似できない企画書を書くことができる」とプラスの評価をしているのでしょうか。「独りよがりな企画書しか書けない」とマイナスの評価をしているのでしょうか。

例2

「文化祭の出し物、演劇に決まったって」クラス委員の田中が言った。
翔太は黙って弁当箱を机に置いた。音が少し大きかった。
「別に」と小さくつぶやいて、席を立った。椅子が床を擦る音が教室に響く。
「翔太?」
「購買に行ってくる」
教室のドアが閉まる音も、いつもより重かった。

この【例2】で正しく読み取りたいのは、翔太の気持ちです。
翔太のセリフは「別に」と「購買に行ってくる」だけですが、「(弁当箱を置く)音が少し大きかった」「椅子が床をする音が教室に響く」などから、翔太の気持ちが読み取れるでしょうか。

例3

「生徒会長に選ばれたんだ!」同じクラスの健太が嬉しそうに報告した。
「おめでとう」と美香は即座に答えた。笑顔を浮かべて、手を差し出す。しかし、その笑顔は一瞬だけ固まった。
「本当にすごいね。演説も私なんかより上手だったし」
握手をしながら、前髪が頬にかかり、表情が隠れた。

この【例3】では、美香の心情を正しく把握できるかがポイントです。
ここで美香は生徒会長に選ばれた健太を純粋に祝福しているのでしょうか。「前髪が頬にかかり、表情が隠れた」から読み取れるのは美香のどのような心情変化でしょうか。

論理的に「読む」ということ

論説文・説明文で求められる読み方

これまで見てきた「行間を読む」「文脈から真意を汲み取る」という技術は、読解力の重要な要素です。
しかし、それだけでは十分ではありません。特に説明文や論説文、ニュース記事などを読む際には、論理的な読解力が求められます。

「最近の若者はスマートフォンばかり見ていて、本を読まない。これは非常に危機的な事態だ」

この文を「若者はけしからん」といった感情や「自分は本を読んでいるけどな…」という気持ちが先に立つような読み方は、論説文・説明文の読解では邪魔になってしまう読み方です。
感情を優先するような読み方ではなく、この文を書いた筆者は「若者が本を読まない」と捉えていて、そのことを「危機的な事態」という意見を持っていると理解することが重要です。

ベースになる語彙力

物語・小説読解のときの細部表現の読解や、論説文・説明文読解のときの意見・主張の読解をする上で重要なことはやはり語彙力です。

「非常に危機的な事態だ」と書いてあるか「とても心配だ」と書いてあるかで、主張の強さが異なります。
他にも「懸念される」「由々しき事態である」「きわめて憂慮すべきである」など、さまざまな表現のレベルが考えられます。

自分が表現するための語彙力が多い方がよいというだけでなく、文章を正しく理解していくためにも語彙力は身につけておきたいところです。

情報があふれる時代だからこそ

現代は情報があふれる時代です。SNSやインターネット上には、正確な情報もあれば、不正確な情報、意図的に歪められた情報も混在しています。
このような環境では、「情報源は信頼できるか」「感情的な表現に惑わされていないか」「自分の先入観で判断していないか」のように、客観的に情報を把握できるようにすることが重要です。

日々の生活の中で触れている情報が、客観的に把握できるようにしておきたいですね。

読解力育成に必要な力を鍛える「新国語講座」

「新国語講座」では、「読解力育成」に焦点を絞り、読解に必要な「語彙力」「文法力」「論理力」をそれぞれ鍛えます。

語彙トレーニングでは、テスト・入試でよく使われる語彙に絞り、累計5,000語の学習をします。
小学生レベルの初級では、1,500語を学習。中学入試問題から精選した基本的な語彙はもちろん、物語文や説明文の読解に必要な語彙を搭載しています。

文法トレーニングでは、文の組み立てや指示語、接続表現など基礎的読解力向上に繋がる文法を主にピックアップ。さらに、言葉の知識も学習します。
基礎的読解力(論理)トレーニングでは、基礎的な読解力を6つのカテゴリに分けてトレーニングし、構造的に読み解く力を鍛えます。1問ごとに解説も付いているので、正解の根拠の確認や問題の見直しを効果的に行うことができます。

トレーニングの成果は確認テストやスキルチャートで確認できます。
無料体験を実施しているお教室もございます。まずはお気軽に体験してみてください!

読解力育成に必要な力をトレーニング

こんな小学生におすすめ!

  • テストや入試に役立つ語彙力をつけたい
  • 中学受験対策になる国語の学習をしたい
  • 実力を分析して苦手を克服したい
  • 自分のレベルに合わせて国語の力を鍛えたい

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まとめ

語彙力は「知っていることばの数」ではなく、複雑なものごとを正しく理解し表現する力

  • 「ヤバい」等の言葉で済ませると、ものごとを単純化して捉えてしまうことにもつながる
  • 物語の読解には、行間・文脈に潜む真意を捉えることが重要
  • 説明文では、感情を優先せず論理的に読解する

「ヤバい」「エグい」で済ませてしまうレベルから脱却し、豊かな語彙を身につけていくことは、単なる国語力の向上にとどまりません。それは、複雑な現代社会を生き抜くための基礎的な力であり、他者とのより深いコミュニケーションを可能にする力でもあります。まずは読んで理解できる語彙を増やしていくこと、次にその語彙を使えるようになることが重要です。使えるようになるために、実際に「使ってみる」という実践の場があるといいですね。

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