速読で本当に読めている?速読と偏差値の関係を調査!

この記事は5657文字です。
約5分で読めたら読書速度1200文字/分。

多くの人が「文章を速く読めるようになりたい」「テストや入試で時間に余裕があったらもっと高得点が狙えるのに…」と感じた経験があるでしょう。
また、社会人になると「もっと速く資料を読んで頭に入れたい」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

一方で「速く読んでしまうと内容の理解度が落ちてしまうだろう」とか「文章の理解度をキープしたまま速く読むなんて無理だろう」という意見が一般的かもしれません。
しかし、今回の調査ではそのイメージを覆す結果が出ました。

速く正確に読み解く力をトレーニング

速読解力講座

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一般社団法人 日本速脳速読協会 理事 安田 哲

ライター

安田 哲

一般社団法人 日本速読解力協会 理事

約20年間にわたり首都圏大手進学塾の現場の最前線で、英語・国語を中心に指導。中学受験・高校受験の難関校への多数の合格者を輩出。科目の内容の指導だけでなく、家庭学習管理、生徒・保護者の皆様との面談を多数行う。大学院では言語学を専攻、英語以外の言語に関しても幅広い知識を有する。

速読力・読解力・偏差値の相関を調査しました

このたび、日本速読解力協会では「速読解力講座」の受講生を対象として、速読力と読解力と国語の偏差値の関係性を明らかにする調査・研究を行いました。
その結果、「速読」と「国語の偏差値」については関係性がほぼなく、速く読んでも文章の理解度が下がる訳ではないことがわかりました。
これまでも多くの受講生がトレーニングをすることで「速く正確に読み解く力」を身につけ、実際に速く読めるようになったり、受験に合格したりしたという声も多く頂いておりました。
今回の記事では、受講生の成績を分析した結果についてお伝えしてまいります。

調査の概要

  • 日本速読解力協会「速読解力講座」受講生を対象
  • 対象学年は小4生~高3生
  • 年3回実施している「速読解力検定」の成績結果と、外部の模擬試験における偏差値結果を分析
  • 調査は2022年度~2024年度の速読解力検定の結果をもとにして、偏差値結果との関係性を分析しています

使用する用語の定義

  • 偏差値 = 模擬試験における偏差値。複数回受験している場合はその平均値。
  • 速読力 = 速読解力検定で要した時間の平均
  • 読解力 = 速読解力検定における正答率(正答した問題数÷全問題数)
  • 基礎的読解力 = 読解に必要な以下の6つの要素
    (1) 係り受け 主語・述語・修飾被修飾など言葉同士の意味のつながりを理解できるか
    (2) 指示語・照応 指示語がさす内容を正しく理解できるか
    (3) 同義文 文を構成する各語句の関係性を理解できるか
    (4) 推理・推論 論理や常識を使って文中に書かれていない部分を正しく推測できるか
    (5) 図表の読解 文が表すことと図表が表すことが同じかどうかを読み取れるか
    (6) 定義と具体例 定義を読み取って整理できるか、具体例との関係性を理解できるか
これまで、英語における速読 (Speed Reading) と理解度に関する研究はありましたが、今回の調査は日本語の速読における文章理解・理解度の相関だけでなく、模擬試験での偏差値も加えて調査ができている点で新たな視点が得られました。
一般社団法人 日本速脳速読協会 理事 安田 哲

日本速読解力協会
安田

調査結果

相関係数について

今回の調査では、速読力・読解力・偏差値のそれぞれの関係性について、相関係数を求めることで分析を行いました。
相関係数とは、簡単に説明すると以下のような指標です。相関係数について詳しく理解していない方はぜひご確認ください。

  • 相関係数は2つのことがらのうち、一方が増えれば、もう一方が増える/減るという関係性を表している
  • マイナス1~プラス1の間の値で表し、マイナスの数は負の相関(一方が増えればもう一方が減る)を表し、プラスの数は正の相関(一方が増えればもう一方も増える)を表している
  • 一般的に0.7以上で強い相関、0.4~0.7は相関があると言われ、0.2以下はほとんど相関がないと言える

例えば、今回の分析において、国語の偏差値と算数の偏差値の相関係数を求めてみましたが、相関係数は0.81となりました。
国語の偏差値と算数の偏差値の間には「かなり強い正の相関」があると言うことができます。
「国語の偏差値が高い生徒は、算数の偏差値も高い傾向にある」という関係性が読み取れます。
逆の「算数の偏差値が高い生徒は、国語の偏差値も高い傾向にある」ということを言うことも可能です。

「速く読んだら内容が理解できない」というわけではない!

速読力と国語の偏差値について、これらの関係性は「ほとんどない」という結果が出ました(相関係数はマイナス0.14)。
「速読力」は「速読解力検定での所要時間」を表していますから、「読むときの速さ」と「国語の偏差値」の間には関係性は見られないという結果でした。

速読力が高い(速く読むことができる)生徒の中には、偏差値が高い生徒も低い生徒も存在しているということになり、国語の偏差値の高低は速読力と関係がないということになります。

一般的には「速く読むことで内容の理解は低下するのではないか」というイメージが抱かれがちですが、そのイメージを覆す結果が出たと言えます。
このことを可能にしている、日本速読解力協会の「速読解力講座」については後ほど詳しく紹介いたします。

読解力と国語の偏差値にはやや強い関係性があった

読解力と国語の偏差値の関係性を調べると、この両者の間にはやや強い関係性があることがわかりました(相関係数は0.62)。
今回は「読解力」を「速解力検定における正答率」としていますので、設問に正しく答えることができている生徒は、国語の偏差値も高い傾向にあると言えます。
これは一般的なイメージに近いと言えるかもしれません。

国語の偏差値に強く関係する「基礎的読解力」の要素とは?

「基礎的読解力」は、係り受け、指示語・照応、同義文、推理・推論、図表の読解、定義と具体例の6つの要素のことで、読解に必要な6つの要素です。
この中で、国語の偏差値ともっとも強く関わっている要素はどれなのかを調査してみました。
これにより、国語の偏差値が高い生徒はどういったタイプの問題で多く正解しているかがわかります。

関係性が最も強かったのは、「定義と具体例」でした(相関係数は0.64)。
定義と具体例は以下のような問題です。まずはチャレンジしてみてください。

定義と具体例

①の文をもとに考えたとき、②の文の内容は起こりうることとして正しいか正しくないかを答えなさい。

①人間の肺そのものには筋肉がなく、肺の周りにある肋骨や横隔膜という膜が動いて、肺の体積を変えている。
②寝転んで大きく息を吸うときには、肺の筋肉が動いている。

正解は?
正解:正しくない

いかがでしたか?正解できましたか?
この「定義と具体例」の問題で正解をすることができている生徒は国語の偏差値が高い傾向にありました。

さて、この「定義と具体例」に次いで国語の偏差値との関係性が強いものを順に挙げると、「係り受け」「推理・推論」「指示語・照応」でした。
相関係数はそれぞれ、0.53・0.51・0.41という結果でした。

ここでも問題にチャレンジしてみてください。
一般社団法人 日本速脳速読協会 理事 安田 哲

日本速読解力協会
安田

係り受け

①の文をもとに考えたとき、②の文の内容は正しいか、正しくないかを答えなさい。

①漢字は5世紀ごろに中国から伝わり、最初は漢字にその意味にあたる日本語を当てはめて訓とした。その後、漢字をくずした平仮名と、漢字の一部を略した片仮名ができた。
②平仮名と片仮名は日本で作られたものだが、漢字と訓は中国から伝えられたものである。

正解は?
正解:正しくない

推理・推論

①の文をもとに考えたとき、②の文の内容は正しいか、正しくないかを答えなさい。

①折れ線グラフでは、線の傾きが急であればあるほど、変わり方が大きいことを表している。
②折れ線グラフで線の傾きがゆるやかであれば、変わり方は小さい。

正解は?
正解:正しい

指示語・照応

①の文をもとに考えたとき、②の文の内容は正しいか、正しくないかを答えなさい。

①高いところから物を落としたとき、物体が落ちる速さは常に重さに関係なく一定であるが、この法則はイタリアの科学者であるガリレオ・ガリレイの実験で確かめられた。
②「この法則」とは、イタリアでは高いところから物を落とすと一定の速さで落ちる法則のことである。

正解は?
正解:正しくない

国語の偏差値の高い生徒は、ここに挙げたようなタイプの問題で正解をしている生徒が多いという結果になりました。
なお、ここで挙げなかった「図表の読解」と「同義文」に関しては、国語の偏差値との関係性はほとんど見られないという結果でした。

速読力と読解力の関係性は、読解力のレベルで変化することがわかった

速読力と読解力の関係性を調べる上で、より詳しく分析ができるよう、読解力のレベルを4つのレベルに分けて分析を行いました。
読解力(速読解力検定における正答率)をもとに、それぞれのグループが均等の人数になるように、受講生を4つのレベルに分けたところ、以下の4つのグループに分かれました。

(1) 読解力 上位層正答率83%以上
(2) 読解力 中堅上位層正答率62%以上~83%未満
(3) 読解力 平均層正答率47%以上~62%未満
(4) 読解力 下位層正答率47%未満

これら4つのグループの中で、速読力と読解力の関係が確認できたものは、(1) の読解力上位層(相関係数0.33)と (4) の読解力下位層(相関係数0.32)でした。いずれも弱い正の関係性が認められました。
読解力の高い生徒は速読力が高い傾向にあるということがわかりました。
「速読が読解に悪い影響があるのではないか?」というイメージを覆す結果だったと言えるでしょう。あわせて、読解力があまり得意ではないと言える層でも速読力が高い傾向にあるという結果は興味深い結果となりました。
読解力に苦手意識を感じている生徒が、制限時間内に問題を解き終えるための一つの解決策として、速読を活用しているのではないかと推測しています。

なお、ここで触れなかった (2) 読解力 中堅上位層と、(3) 読解力 平均層については、読解力と速読力の関係性は特に認められませんでした。

国語の偏差値には別の要素の学習も必要

今回の調査では、偏差値を塾で行われる模擬試験結果から利用しました。
当然、漢字の読み書きや語句などの知識による問題や、読解した上で記述して表現しなくてはいけない問題などもありますので、純粋に「読解の能力だけを反映した偏差値」ではありません。

国語の偏差値向上には、速く正確に読み解く力はもちろんのこと、語彙・知識の力や表現力など別の要素の学習も必要であると言えます。
一般社団法人 日本速脳速読協会 理事 安田 哲

日本速読解力協会
安田

速く正確に読み解く力を鍛える「速読解力講座」

日本速読解力協会の速読トレーニングは、流し読み・斜め読みではなく、理解しながら速く読む速読解力を身につけます。

上記は速読トレーニングをしている受講生が、文章を読んだ後に確認問題を行った結果のグラフです。
内容を理解した状態で速く読めるようになっていることがわかります。

秘訣は脳が持つ2つの特性「可塑性」「汎化作用」です。

可塑性

汎化作用

外部からの刺激に柔軟に対応する特性・可塑性と、ひとつの能力が活性化すると他の能力も連鎖的に活性化する特性・汎化作用を活用することで、理解しながら速く読む力を身につけることができます。

25年以上培ったノウハウと脳科学に基づいた速読トレーニングは、のべ25万人以上が受講しており、全国累計3,600教室に導入されています。(※2025年3月時点)
ぜひトレーニングを体験してみてください!

まとめ

速く読むことで文章の理解度が下がるわけではない!

  • 読む速度が速い生徒の中には偏差値が高い生徒も低い生徒も存在した
  • 読解力が高い生徒は国語の偏差値が高い傾向にあった

今回の調査では、速読と国語の偏差値の関係性はほとんどないことがわかり、「速読すると内容の理解ができないのではないか?」というイメージとは違う結果となりました。読解力は鍛えることで偏差値が向上する可能性が高いと考えられ、特に「定義と具体例」が国語の偏差値との関係性が強いといえます。
入試などで速く読めることは武器になります!内容を理解しながら速く読む力を身につけましょう。

速く正確に読み解く力をトレーニング

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