みんなが読書を楽しめる環境を!読書バリアフリー法って知っていますか?

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2019年6月、読書バリアフリー法が施行されたことを知っていますか?

読書バリアフリー法は「すべての人にとって読書による文字や活字文化の恩恵を受けられるようにするための法律」なのですが、どのような背景があって施行されたのでしょうか。

施行されたことによって何が変わるのでしょうか?
法律の基本方針や取り組みなどを紹介します!

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読書のカタチを選べる「読書バリアフリー法」とは

2019年6月に施行された読書バリアフリー法、正式名称は「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」と言います。
名称だけだと障害者のための法律のように感じるかもしれませんが、すべての人に向けての法律です。
具体的にどのような法律なのでしょうか。

読書が難しい人々向けに環境を設備していくための法律

読書バリアフリー法は「障害の有無に関わらず、すべての人が読書による文字・活字文化の恩恵を受けられるようにするための法律」として、2019年6月に施行されました。

例えば、視覚に障害があったり、読むことが困難(ディスレクシア)という方々は、本を買ったり借りたりして読むことが難しい場合があります。
読書バリアフリー法ではこのような方々を「読書困難者」と呼んでいます。

そのようなさまざまな障害がある方が、利用しやすい形式で本の内容にアクセスできるようにという目的で、読書バリアフリー法は施行されました。

おじいちゃんやおばあちゃんが字を読みづらそうにしていたけれど…
障害のある人だけでなく、お年寄りの読書へのハードルも低くなるかもしれないね

なぜ読書バリアフリー法が施行されたのか

日本には、前述したような「読書困難者」が多く存在しています。
そのような方々が本や活字に触れる機会を失わないように、政府は「読書バリアフリー法」の制定を決定しました。

近年ではデジタル書籍が普及したり本の内容を読み上げる機能が追加されたりと、本や活字に関わる技術が目まぐるしく発展しています。
本や活字に対する時代の流れも、読書バリアフリー法の制定を後押しした背景だと言えるでしょう。

読書バリアフリー法の基本方針と施策

読書バリアフリー法の基本方針は3つあります。
施策とともにそれぞれ解説します。

1.アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供

1つめは、「読者困難者が利用しやすい(アクセシブル)電子書籍を普及していきましょう」という方針です。

具体的な施策としては、「一般に普及している電子書籍(例えば、音声読み上げ対応の電子書籍、テキストデータなど)を利用しやすい形で提供する」こと、「障害者施設や図書館等で製作される電子書籍等も合わせて普及させていく」ことが挙げられています。
また、「点字図書や拡大図書といった視覚に障害を持った方々に需要がある書籍の提供にも力を入れる」としています。

2.アクセシブルな書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上

つぎに、「今あるものよりもさらに利用しやすい書籍を増やしていきましょう」という方針です。

「公立図書館や点字図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館、国立国会図書館において、各々の果たすべき役割に応じて読書困難者が利用しやすい書籍等を充実させる」こと、さらに「それらを全国の視覚障害者等に届ける仕組みとして図書館間の連携やネットワークを構築していく」ことが具体的な施策として挙げられています。

3.視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮

3つめは、「読者困難者に対するサービスや図書の種類以外にも、それぞれの障害の内容に応じて利用できる方法を用意していこう」という方針です。

具体的な施策としては、「国会図書館やサピエ図書館(読者困難者向けに音声や点字などで図書の検索・ダウンロードができ、自宅からアクセスできる図書館)のサービス内容を検討する」こと、「ICTを活用した相談や使用のサポートや端末機器を貸出する」ことが挙げられています。

参考:文部科学省「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」の決定について

読書バリアフリーに関する図書館の取り組み

公立図書館では、読者困難者に対して対面朗読サービス、拡大読書器(文字を拡大して表示できる)の設置、本の貸出・郵送サービスをしている図書館があります。

また、インターネット上の電子図書館「サピエ図書館」では、30万タイトル以上の録音・点字・電子図書を、パソコン・スマートフォン・専用機器を使って、読んだり聴いたりできます。
録音・点字図書の貸出を依頼することもできます。

家の近くの図書館で、大活字本や点字図書などを見たことがある人もいるかもしれないね!

図書館で利用できる本

大活字本

大きな文字で書かれている本で、目が見えにくい方でも読みやすくなっている本です。

点字図書

点字に翻訳された本です。点字と点図(点を使って図や絵を表したもの)を透明なシートに打って絵本に貼った「点訳絵本」と呼ばれるものもあります。

LLブック

ピクトグラムと呼ばれる絵文字や写真、図を使ったりして、やさしい言葉とともに内容をわかりやすく書かれた本のことです。

布の絵本、さわる絵本

布・革・毛糸などを用いて作られた絵本のことで、触ることで絵の形がわかる仕掛けになっています。ボタンをとめたり、ひもを通したり、楽しみながら本を読むことができます。

DAISY

「Digital Accessible Information System」(アクセシブルな情報システム)の略称で、デジタル録音図書の国際標準規格のことを指します。
目次から、読みたい見出しやページに移動することができます。


音声DAISY

図書や雑誌の内容を録音して音声にしたもので、図や写真の説明も入っています。
目次やページ情報が収録されているので、本をめくるように読むことができます。音声の速さも変えることができます。


マルチメディアDAISY

文字や画像をハイライトしながら、その部分の音声と一緒に読むことができます。パソコンやタブレットなどを使って再生します。文字の大きさや背景の色も変えることができます。

電子書籍

パソコンやスマートフォン、専用機器を使って、目次から読みたいページに移動したり、文字の大きさ・色・フォント・背景の色を変えることができます。内容を音声で聴くこともできます。

参考:文部科学省「誰もが読書をできる社会を目指して~読書のカタチを選べる「読書バリアフリー法」~(啓発用リーフレット)」

読書バリアフリー法施行で変わる環境

読書バリアフリー法が目指すものや取り組みはわかったけれど…わたしたちの環境はどう変わるのだろう?

本の読み方が変わる

紙の本に関しては、点字の本以外にも、読者困難者向けに文字の大きさやフォントを変えて読みやすくした本が以前より手に入りやすくなりました。

また、デジタル書籍についても、文字の大きさや色を変えたり、ふりがなをつけられたり、好きなスピードで内容を音声化できたり、タッチしてページをめくれたりと、自分が読みやすいと感じる方法で読めるような技術が追加されています。

読書困難な子どもたちが積極的に本や活字に関わることができる

視覚に障害があったり、読むことが困難(ディスレクシア)な子どもたちは、字が読むということに対してのハードルが高いため、勉強や読書に対してモチベーションが下がってしまいます。

読書バリアフリー法の制定によって、同じ教科書を使って学ぶことができたり、アクセシブルな図書が提供されることで読書量が増えたりするなど、本や活字を読むことへの気持ちが前向きになります。

さまざまな種類の本がいろいろな読み方で読める

視覚に障害があったり読むことが困難に感じたりする人たちと同じように、高齢者も「字が小さくて読みづらい」などの読書や活字に対する悩みを持っています。

読書バリアフリー法の制定で、より多くの人々が読書を楽しめるという目的を実現するために、技術やアクセシブルな方法が普及することによって、電子書籍の利用や読み上げ機能向上などさらなる進歩が期待されます。

まとめ

読書バリアフリー法で全ての人々が本を楽しめる世の中に

  • 読書バリアフリー法は読書困難者向けに環境を設備していくための法律
  • 読書バリアフリー法施行でアクセシブルな書籍やサービスの普及を目指す
  • 読書困難者の活字へのハードルが下がることで読書や勉強へのモチベーションが向上する

読書バリアフリー法が施行されることにより、今まで本や活字を読みづらいと感じていた人々も、それぞれに合った方法で読書を楽しめるようになります。また、アクセシブルな書籍や電子書籍が普及することにより、必要な情報にたどり着きやすくなります。
情報の共有や教育の均等化にもつながる読書バリアフリー法は、これからの社会に大きな影響をもたらすでしょう。

一般社団法人 日本速読解力協会 理事 安田 哲

監修

安田 哲

一般社団法人 日本速読解力協会 理事

約20年間にわたり首都圏大手進学塾の現場の最前線で、英語・国語を中心に指導。中学受験・高校受験の難関校への多数の合格者輩出に加え、卒業生の約80%を偏差値60以上の高校に進学させるなどの指導経験あり。大学院では言語学を専攻、英語以外の言語に関しても幅広い知識を有する。

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